賃貸物件で暮らしていると、退去時に気になるのが「原状回復費用」です。
特に喫煙者にとって、「タバコによる壁紙の黄ばみは退去費用に影響するのか?」という疑問は避けられません。
中でも「タバコによるクロス(壁紙)の黄ばみ」は、大家さんや管理会社とのトラブルに発展しやすい代表的な項目です。
最近では加熱式タバコの普及で、紙巻きタバコを吸われる方が昔に比べると少なくなってきました。
また、紙巻きタバコを吸われる方の中でもベランダや換気扇の下で吸うなどの対策を取られている方がいらっしゃる一方で、部屋の中で吸って壁紙が黄ばんでしまったという方も多いです。
本記事では、紙巻きタバコや加熱式タバコがクロスに与える影響、退去時にどの程度費用が上がるのか、さらに予防や対策方法について詳しく解説します。
タバコがクロスに与える影響とは?
黄ばみの原因
タバコの煙には「タール」と呼ばれる成分が含まれています。
これはヤニとも言われ、この「タール」が黄ばみの原因物質です。
煙と一緒に部屋の壁や天井に付着し、時間が経つにつれて黄ばみや茶色いシミとなって現れます。
特に白やクリーム色のクロスは汚れが目立ちやすく、短期間でも色が変わることがあります。
臭いの残留
タバコによる問題は見た目だけではありません。
煙に含まれる臭い成分はクロスの繊維や下地、さらにはカーテンや家具にまで浸透します。
窓を開けて換気しても、完全に消えることは少なく、次の入居者に不快感を与える要因になります。
黄ばみとシミの広がり方
喫煙習慣がある家庭では、喫煙する場所がリビングや寝室であれば、壁一面が均一に変色することもあります。
逆に窓際や換気扇の近くだけで吸っていても、その周囲のクロスが部分的に黄ばんでしまうことが多いです。
紙巻きタバコとの違い
加熱式タバコは、煙ではなく水蒸気や加熱した蒸気を発生させる点が特徴です。
そのため「壁紙が黄ばみにくい」と言われています。
実際、紙巻きタバコほど顕著にクロスが変色することはありません。
完全に無害ではない
しかし、「全く影響がない」とは言い切れません。
・加熱式タバコはタール量が少ないとはいえ、ゼロではありません。長期間吸っていればうっすらと黄ばみが出る可能性があります。
・電子タバコの場合、リキッドの種類によってはわずかに臭いが残ることもあります。
・換気の悪い部屋で使用を続けると、壁紙やエアコンフィルターに成分が付着することもあります。
つまり紙巻きタバコよりは軽度ですが、完全にリスクがないわけではない、というのが実際のところです。
賃貸物件における「原状回復」とは?
経年劣化との違い
賃貸契約では、入居者は退去時に「原状回復」を求められます。
ただし国土交通省のガイドラインでは、「経年劣化や通常使用による損耗は借主の負担ではない」と明記されています。
例えば、家具を設置した跡や日焼けによる多少の色あせは自然な消耗にあたり、費用を請求されることは基本的にありません。
喫煙は「通常使用」に含まれるのか?
問題はここですよね。
タバコの黄ばみや臭いは「通常使用の範囲」とは見なされにくく、故意・過失に近い扱いをされるケースがほとんどです。
つまり、喫煙によって汚れたクロスは入居者の負担で張り替えなければならないことが多いのです。
タバコによる退去費用の実例
部分張替えと全面張替え
タバコの汚れが一部分に限られていれば、その範囲だけを張り替えることも可能です。
しかし実際には臭いが部屋全体に染み込んでしまうため、壁一面ではなく「部屋全体の張替え」を求められるケースも少なくありません。
費用の目安
地域によって変わりますが、一般的なクロス張替え費用は1㎡あたり1,000〜1,500円程度。
6畳の部屋全体を張り替えると5万〜7万円ほどが相場です。
もし複数の部屋で喫煙していた場合、10万円を超える請求となることも珍しくありません。
訴訟の例
過去には、退去時に「壁紙全面の張替え費用」を請求され、裁判に発展した事例もあります。
裁判所の判断でも、タバコによる変色や臭いは「通常の使用による劣化ではない」とされ、借主に負担を求める判決が下されています。
黄ばみを防ぐ・抑えるための工夫
喫煙者が賃貸住宅に住む場合、少しでも費用負担を減らすためには日常的な工夫が必要です。
・換気を徹底する
窓を開けたり、換気扇の近くで喫煙することで、クロスへの付着を減らせます。
・喫煙スペースを限定する
ベランダや玄関など一部の場所だけにすることで、クロス全体への影響を抑えられます。
・空気清浄機の活用
タバコ用のフィルターを備えた空気清浄機を使えば、煙や臭いをある程度除去できます。
・クロスの上から塗装やコーティング
防汚機能のある塗料やフィルムを使うことで、汚れの進行を抑える方法もあります。
退去時に少しでもトラブルを減らすために
契約書の確認
入居時の契約書に「喫煙禁止」と記載されている場合、違反すると全面的に費用を請求される可能性があります。
まずは契約内容を確認しましょう。
入居前の状態を記録
写真を撮っておくと、退去時の比較に役立ちます。
喫煙の有無に関わらず、トラブルを避けるための有効な手段です。
費用は業者によっても変わる
管理会社が指定する業者の見積もりが高額な場合、自分で相見積もりをとることで費用を抑えられることもあります。
まとめ
黄ばみやシミの広がり方 | 匂いの残留 | 現状回復費リスク | |
---|---|---|---|
紙巻きタバコの場合 | 均一で全体的に黄ばむ | 残りやすい | 高い |
加熱式タバコ、電子タバコの場合 | 長時間喫煙するとうっすら黄ばむ恐れあり | 残りにくい | 紙巻きタバコに比べると低い |
以上、紙巻きタバコや加熱式タバコがクロスに与える影響、退去時にどの程度費用が上がるのか、さらに予防や対策方法について詳しく解説しました。
タバコによるクロスの黄ばみや臭いは、退去時の原状回復費用を押し上げる代表的な要因です。
ガイドライン上も通常損耗ではなく借主負担とされやすく、場合によっては全面張り替えや下地交換、消臭施工などで高額請求になることがあります。
一般的なワンルームでも15万円から20万円程度が目安で、条件次第ではそれ以上に膨らむこともあります。
喫煙者は日常的な換気や清掃、喫煙場所の工夫によってリスクを減らすことができますが、完全にゼロにするのは難しいのが実情です。
今後賃貸物件に住む予定がある方は、契約時のルールやガイドラインを理解したうえで、自分のライフスタイルに合った物件を選ぶことが重要です。
なお、クロスの張り替えや消臭工事を自費で行う場合は、信頼できる内装業者に依頼するのが安心です。
ポータルサイト「はりかえ隊」では、地域ごとに実績あるクロス・内装業者を紹介しています。
退去前に費用を抑えるためのリフォームを検討している方や、新居を快適に整えたい方は、ぜひ活用してみてください。